ボロブドゥール寺院は、時を超えて輝き続ける世界の驚異の一つであり、インドネシアの中部ジャワ州マゲランに位置する仏教建築の傑作です。
ユネスコの世界遺産に登録されているボロブドゥールは、単なる石のモニュメントではなく、仏教の教えが一つひとつのレリーフとストゥーパに刻まれた精神的な表現です。古代インドネシア文明の栄光を静かに物語っています。
雄大な構造と深い哲学
ボロブドゥール寺院は、インドネシアの伝統的なピラミッド構造「プンデン」を取り入れて建てられており、四角い形の六つの階層テラスの上に、三つの円形テラスが重なるように配置されています。
この構造は頂上に主ストゥーパを設け、その周囲には、それぞれに仏像を収めた72基の中空ストゥーパが並んでいます。この独特な形状は、三つの世界を表す仏教宇宙観を象徴しており、その世界観を見事に体現しています。
- カーマダートゥ（欲界）：仏教における「欲望の世界」を表し、ボロブドゥール寺院の隠された基壇に相当します。
- ルーパダートゥ（色界）：形ある世界を象徴し、寺院の中央部分にある四つの方形テラスに表れています。これらのテラスは、仏陀の物語やダルマの教えを描いた数千のレリーフで飾られています。
- アルーパダートゥ（無色界）：形のない世界を象徴し、上部にある三つの円形テラスに対応しています。中空のストゥーパが並び、完成と涅槃を表現しています。
ボロブドゥール寺院の建築のユニークさ
この寺院の各階層とレリーフは、仏教の教えを段階的に理解するためのスピリチュアルな旅に巡礼者を誘います。
ボロブドゥールを特徴づけるもう一つの要素は、約2,672枚もの豊富なレリーフであり、3キロメートル以上にわたってさまざまな物語が刻まれています。
釈迦の生涯を描いた物語（ジャータカ物語やラリタヴィスタラ）、善行にまつわる説話（アヴァダーナ）、さらには最上の智慧を求める菩薩スダナの旅（ガンダヴィユハ）などが見られます。
これらのレリーフは視覚的に美しいだけでなく、石に刻まれた経典としての役割も果たし、巡礼者の精神的な旅路を導いています。
また、ボロブドゥールには504体の仏像があり、アルパダートゥの中の透かし彫りのストゥーパにそれぞれ異なる印相（ムドラー）で座っています。
レリーフと仏像の調和によって、複雑で深い視覚的な物語が形作られています。
ボロブドゥールの長い歴史と保存への取り組み
ボロブドゥール寺院の歴史は、8世紀から9世紀にかけて建てられたことに始まります。ボロブドゥールはシャイレンドラ朝の王国の遺産です。栄華を極めた後、火山灰に埋もれ、雑草に覆われながら、何世紀にもわたって人々の記憶から忘れ去られていました。
19世紀初頭に再発見され、大規模な修復作業が始まりました。1970年代から1980年代にかけて、ユネスコの協力のもと、その修復は最盛期を迎えました。
この修復作業は、これまでに行われた中で世界最大規模の古代遺跡保存プロジェクトであり、ボロブドゥール本来の壮麗さを取り戻しました。
この努力のおかげで、1991年にボロブドゥールはユネスコの世界遺産に登録され、人類にとっての普遍的な価値が認められました。ボロブドゥールの保存は、今も続く責任ある取り組みです。
ボロブドゥール寺院は、自然風化の脅威やムラピ山の火山活動、さらには多くの観光客による影響など、さまざまな問題に直面しています。これらの状況には、絶え間ない保存努力が必要です。
政府やさまざまな国際機関が協力し合い、ボロブドゥールの構造やレリーフの完全性を保ち、次の世代にもその美しさを受け継ぐことができるよう取り組んでいます。
観光の魅力と精神的な体験
ボロブドゥール寺院は、インドネシアで最も人気のある観光地の一つです。所在地は、中部ジャワ州マゲラン県ボロブドゥール郡ボロブドゥール村、バドラワティ通りのボロブドゥール寺院区域にあります。
訪問者は、カルマウィバンガ博物館やサムドラ・ラクサ博物館など、周辺にある博物館とともに寺院の複合施設を探索することで、歴史や遺物の発見についてより深く理解することができます。
また、多くの旅行者は、朝の霧と金色の光の中に浮かび上がるストゥーパのシルエットを背景に、寺院の頂上から見る神秘的な朝日を目当てに訪れます。
観光客にとって魅力的な場所であるだけでなく、ボロブドゥールは仏教徒にとっての聖地であり、ワイサック（仏教の祝日）の祭典が行われる中心地でもあります。毎年、何千人もの仏教徒や観光客がこの地に集まり、夜空に無数のランタンを放つ神聖な行列に参加します。
この伝統は、ネガティブなものを手放し、希望と悟りの達成を象徴しています。
その結果、ボロブドゥールの夜空は光と深い精神的な意味で満たされます。
ボロブドゥール寺院への行き方
ボロブドゥール寺院へ行くには、まずこの寺院がある中部ジャワ州のマゲランに向かう必要があります。この場所は非常に便利な立地にあり、特にジョグジャカルタなどの主要都市から簡単にアクセスできます。以下はその詳しいガイドです。
ジョグジャカルタ経由（最も一般的で便利）
ジョグジャカルタから出発する場合は、到着する場所に応じていくつかの交通手段があります。
空港から来る場合は、空港シャトルバスに乗ってジョグジャカルタ駅（トゥグ駅）またはジョンボール・バスターミナルへ向かう必要があります。
そこからボロブドゥール寺院までバス、タクシー、またはレンタカーで行くことができます（所要時間は約1時間半です）。
バスを利用したい場合は、ボロブドゥール・バスターミナル行きのバス、またはローカルのミニバス（トラベル）に乗ることができます。ターミナルから寺院までは徒歩やベチャ（人力車）、オジェック（バイクタクシー）で行ける距離で、所要時間は約5〜10分です。
セマラン経由
セマランからボロブドゥールへ直接行く場合は、テルボヨ・バスターミナルまたはスクン・バスターミナルから長距離バスを利用できます。セマラン－マゲラン－ジョグジャカルタ線のバスを選んでください。
所要時間は約3時間ですが、頻繁に停車する場合はそれ以上かかることもあります。チケットの料金も手頃で、およそ3万ルピアから5万ルピア程度です。
マゲラン経由
すでにマゲラン市にいる場合、ボロブドゥールまでの所要時間は約40分です。ローカルの公共交通機関、またはタクシーやオンラインバイク配車サービスを利用できます。
スマランや中部ジャワ北部周辺から来る人におすすめです。
ボロブドゥール寺院の入場料はいくら？
インドネシア人の大人または一般の方のボロブドゥール遺跡公園の入場料は50,000ルピア、学生は25,000ルピアです。
外国人観光客の場合、大人は25ドル、子供は15ドルとなっています。
営業時間は毎日06:30～17:30です。月曜日は仏教遺跡の保護のため、見学できるのは寺院の外側（中庭や公園エリア）のみとなります。
